雪の降る日に、願いを消して
その度に思わず声を上げそうになり、慌てて両手で自分の口を覆った。


駿はいつの間にこんなに体調を悪くしたんだろう?


前兆なんて全くなかった気がする。


歩くのもままならないほどの体調不良なら、朝から休んでいたって不思議じゃない。


あたしはハラハラしながら駿の後を付けていく。


校門を抜けて、近くの公園まで差し掛かった時、駿が足を止めた。


一瞬気が付かれてしまったのかと思ったが、駿は制服のポケットに手を突っ込んでスマホを取り出した。


誰かに連絡を取るのだろう。


この調子で家までたどり着けるとは思えないから、迎えを頼むのかもしれない。


あたしは電柱の陰に身を隠してその様子を伺った。


駿が誰かに電話をかけている。


その間立っている事もつらいようで、公園のフェンスに体をもたれさせている。


「もしもし、翔か?」


そんな声が聞こえて来る。


ショウって、誰だろう?


「悪い、学校近くの公園にいる。迎えに来てくれ――今日は構わない、それより1人で帰れそうにないんだ」


そんな会話を少しの間続けた駿は、重たい体を引きずるようにして公園内へと入って行った。


一番近くの青いベンチに座り、そのまま横になるのが見えた。


駿がこんなに苦しんでいる時に何もできないじぶんが歯がゆく感じられる。


だけど、ここで姿を見せるわけにはいかない。


駿は警戒して逃げてしまうだろう。


逃げられるような体ではないのに、それでも首を突っ込もうとするあたしからは逃げ切ってしまうだろう。


あたしは同じ場所に隠れたまま、公園内の駿の様子を伺った。
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