雪の降る日に、願いを消して
聡樹の問いかけに、あたしはまた言葉に詰まる。


「な、なんでだろうね……」


そう返事をする自分の声があまりに小さくて、自分でビックリしてしまう。


「あ、でも俺知ってるかも」


「へ!?」


突然そう言われて、あたしは驚いて聡樹を振り返った。


見ると聡樹は歩いてこちらへ向かってきている。


「知ってるってなにを……?」


「ジンクス」


短く答え、黒板の前に立つ。


ついさっきまであたしが立っていた場所だ。


「好きな奴の名前を黒板に書いて、誰にも見られない内に消すと思いが届くって」


「へ……へぇ」


あたしはひきつった笑顔を浮かべて、初めて知ったかのようにふるまった。


だけど、ちゃんと演技ができているかどうかの自信はない。
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