雪の降る日に、願いを消して
傍から見ればあたしは不審者だろう。


人や車が通るたびにスマホを取り出して待ち合わせをしているフリをした。


そんな時間が流れていた数十分後。


足早にこちらへ向かってくる人影が見えて、あたしは電信柱から顔をのぞかせた。


帽子を深くかぶった男性がこちらへ近づいてくる。


その顔にドクンッと心臓が大きく跳ねた。


昨日薬局で見た人だ。


駿にそっくりなその人は迷うことなく公園へ入って行き、ベンチで横になっている駿に声をかけた。


あの人がショウ……?


駿にそっくりなその人にあたしは呼吸までも忘れてしまっていた。


大きく息を吸い込んで、長く吐き出す。


落ち着け、落ち着け。


目の前の光景を信じられなくてメマイを感じる。


だけど確かにその人は存在していた。


駿が2人。


紗英と聡樹と一緒に考えた現実が今目の前にあるんだ。
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