雪の降る日に、願いを消して
トラを助けた駿ならば、トラの事を気にしてあたしに話しかけて来ることも理解できる。


その瞬間が嬉しくて、会話する時間は楽しくて幸せで、あたしはどんどん駿に惹かれて行った。


大人しくて、桜子とずっとベッタリくっついている駿とは違う。


つまり、あたしがずっとときめいていたのは駿ではなく……ショウの方なんだ。


そう気が付いた瞬間、持っていたココアが膝から転がって落ちてしまった。


桜子が好きなのは間違いなく駿の方。


あたしが好きなのはショウの方……。


心臓がバカみたいに大きく跳ねているのがわかった。


あたしと桜子は別々の人を好きだったんだ。


そう気が付いてしまうと、一瞬にして期待が膨らんでいってしまう。


だけど、その期待も長くは続かなかった。


あたしはトラの話をしている駿に告白をして、振られているのだ。


つまり、あたしはちゃんとショウに告白し、そして振られたのだ。


一気に気持ちが暗く沈んでいくのがわかった。


どっちにしても、あたしは好きな人と付き合う事はできないのだ。


地面に落ちたココアをノロノロと拾い上げ、砂がついたままの缶をそのまま鞄にねじ込んだ。


そのまま立ち上がり、「行こう」と2人に声をかけて歩き出したのだった。
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