雪の降る日に、願いを消して
ウインナーをお弁当箱へ戻し、あたしは俯いた。


このままなにもわからないままモヤモヤと過ごすのだって、もちろん嫌だ。


いっそ、当初のままなにも知らずに生活していた方がよかったのかもしれないとまで思えてくる。


あたしが告白なんてしてしまったから、見えなくていい事まで見えて来てしまったのかもしれない。


それはあたしたちの生活だけでなく、駿とショウ、そして桜子の生活まで揺るがしてしまうような、大きな事だ。


これ以上首を突っ込んではいけない。


すべてが崩壊していく前にやめるんだ。


「もう、やめようよ」


そう言ったのは紗英だった。


紗英はジッと聡樹を見ている。


「は? なんでだよ?」


聡樹は目を見開いて紗英を見た。


「だって……踏み込んでほしくないことって、誰にでもあるじゃん」


紗英は言いにくそうにそう言った。


お弁当はほとんど手付かずのままだ。


「それはそうかもしれないけれど、そのせいで鈴は傷ついたんだぞ」


聡樹があたしを庇うようにそう言った。


あたしが傷ついたから駿の隠し事を明らかにするのは当然だ。


そんな風に言っているように聞こえて、あたしは思わず左右に首をふった。


だけど、なにも言えなかった。


紗英は悲しそうな表情で聡樹を見つめる。
< 190 / 312 >

この作品をシェア

pagetop