雪の降る日に、願いを消して
その時の気持ちはあたしでもわかった。


桜子に、駿に振られたと打ち明けた時。


あたしは確かに桜子の背中を押したんだ。


その時のあたしは今にも胸が張り裂けそうだった。


駿を諦めたくなんかなかったのに、諦めた方が楽だとわかっていたからそちらへ逃げたんだ。


結局のところ、そんな事をして諦めきれるような気持ちではなかったのだけれど。


紗英も、きっと同じなのだ。


聡樹への気持ちはそう簡単に諦められるものじゃなかったんだ。


「あたし、紗英の気持ちも知らずに……ごめんね」


「鈴はなにも悪くない」


左右に首をふり、うつむく紗英。


その姿はまるで親に叱られている子供のようだった。


あたしはそんな紗英の体を抱きしめた。


今あたしにできることなんて、きっとちっぽけな事なんだろう。


紗英の気持ちを本当に癒してあげる事ができるのは、聡樹ただ1人だから。


「紗英、1つ約束しない?」


「約束?」


紗英が涙声で聞いてくる。


「うん。お互いに、もう好きって気持ちに嘘をつかないこと」
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