雪の降る日に、願いを消して
あたしは二の句を継ぐことができず、紗英と聡樹を交互に見た。


紗英は困ったように左右に首を振る。


聡樹はジッとショウを睨み付けていた。


そんな聡樹の態度にさすがのショウも「なにか、俺が悪い事でもした?」と、声を低くして聞いて来た。


3人の間に流れる雰囲気が重たくなるのを感じる。


こんなのは嫌だ。


こんな風になりたかったわけじゃない。


けれど、聡樹とショウはにらみ合ったまままだ。


「ば……場所を移動しない?」


あたしは笑顔を張り付けてそう言った。


生徒玄関の周辺には沢山の生徒たちでごった返している。


こんな中で睨みあうなんて、目立ちすぎる。


下手をすれば先生まで来てしまうかもしれない。


「俺は何も用事はないよ?」


ショウが言う。


だから早く帰らせてくれ。


そう言いたいのだろう。


だけど聡樹はその場をどかなかった。


「俺たちはお前に用事がある」


「何の用事? 早くしてくれないかな?」


「俺たちはお前の秘密を知ってるんだ」


聡樹の言葉にショウが眉をピクリと動かした。


「俺に秘密なんてない」


「それはどうかな?」


ニヤリと笑う聡樹に、ショウは警戒心を込めた瞳を向けたのだった。
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