雪の降る日に、願いを消して
だけど、いつも駿やショウの姿を見ていたあたしにはすぐに気が付いた。


ショウは内心焦っている。


さっきから膝の上で手を開いたり閉じたりを繰り返しているのだ。


その間に手の汗をズボンでぬぐったりもしている。


緊張状態にあるとこに間違いなかった。


「ショウ」


聡樹がその名を口にした瞬間、ショウから完全に笑顔が消えていた。


ひきつったような声で「誰の事を言ってるんだ?」と聞くが、もはや嘘をつきとおすのは無理だと、本人もわかっているようだった。


「昨日早退した時に鈴がお前の後を付けてたんだ」


聡樹がそう言うと、ショウがこちらへ視線を向けた。


険しい表情が向けられた瞬間、胸がジリジリと焼けるように痛むのを感じてすぐに視線をそらせてしまった。


好きな人から軽蔑の視線を向けられることになるなんて、思ってもいなかった。


「早退した駿は、自分にそっくりなショウという人間に迎えに来てもらったそうだ」


「鈴、君には失望したよ」


聡樹が言い終わる前にショウの声が聞こえてきて、あたしはビクリと体を振るわせた。


とても冷たくて、怒りしか感じ取れないその声に体中が凍り付く。
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