雪の降る日に、願いを消して
やっぱり、そうだったんだ。


分かっていたことだけれど、こうしてショウ本人の口から聞くと途端にリアリティが増して来る。


「ショウは学校は?」


あたしはそう聞いた。


ショウは切なそうにほほ笑んで「俺は行ってない」と、左右に首をふったのだ。


「駿のために諦めたってことか?」


聡樹が聞く。


するとショウは慌てて「それは違う」と、否定した。


「こうすることは俺の望みでもあったんだ。駿はしっかり高校を卒業して、大学へ進学して、しっかりした会社に入るんだ」


「自分はどうでもいいの?」


あたしは思わずそう聞いていた。


駿の人生が円滑に進んでいくように、ショウは自分の人生を投げ出しているのだ。


そんな事、簡単に受け入れられたとは思えなかった。


「そうじゃない。駿が立派な人間になってくれることが俺の望みだったんだ」


そう言われても、やっぱりあたしにはわからなかった。


「ショウはクラスでも人気で勉強もできる。ちゃんと学校へ通う事だってできたはずでしょ?」


そう言ったのは紗英だった。


「俺自身が学校へ通う事はこの際どうでもよかったんだ」


どうでもいいだなんて、なんでそんな事が言えるんだろう。


体の弱い弟のためにどうしてそこまで自分を犠牲にすることができるんだろう?
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