雪の降る日に、願いを消して
だけど、桜子は……。


あたしは隣の席で教科書を引き出しへ入れている桜子に視線を向けた。


桜子はあたしの視線に気が付いて「どうかした?」と、聞いてくる?


「ううん、なんでもない」


左右に首をふってそう言い、ほほ笑む。


どうして桜子は駿に告白をしないのだろう?


客観的に見ていれば2人は両想いだとすぐにわかる。


悔しいけれど、桜子が告白すれば絶対に付き合う事ができると思う。


それなのに両者とも何も行動に起こさないのは、あたしが見ていたってじれったいと感じてしまう。


2人ともがものすごく奥手なら納得できるが、2人並んで登校して来ている風景を見ると、そうとも言いにくい。


正直、2人がさっさと付き合ってくれればいいのにと思う事も、幾度となくあった。


付き合い始めたと知ればショックを受けると思うけれど、桜子が相手なら納得せざるを得ない。


あたしはずっと、2人の関係について疑問に感じていたのだった。


「早く告白しないと、他の誰かにとられちゃうかもよ?」


紗英が冗談めかしてそう言うので、あたしはしかめっ面をした。


駿は女子生徒からも男子生徒からも人気が高い。


紗英の言っている事が現実になる可能性は十分にあった。


「わかってるよ……」


あたしは小さな声でそう返事をして、いつものように駿の背中を見つめたのだった。
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