雪の降る日に、願いを消して
あたしが間に入らなければ、きっとうまく行くだろう。


「この後、どうする?」


聡樹に聞かれて、あたしは「どうしようか……」と、呟いた。


可憐という人物についてはなんとなくわかったけれど、すでに引っ越しをしているなら会う事はできない。


約束がなんなのかもわからないし、これからどうすればいいのかもわからない状態だ。


「ねぇ、鈴。鈴が良ければなんだけど、駿の家に行ってみない?」


そう提案してくれたのは紗英だった。


「駿の家に……?」


「うん。あたしたちクラスメートで住所だってわかってるんだし、それに、その近所に可憐って人も住んでいたわけでしょ? だったら、近くまで行けばなにかわかる事もあるかもしれないじゃない?」


そうかもしれない。


だけど、なんの用事もないのに駿の家の付近をうろつくのは気がひけてしまう。


もし家の誰かに……萌ちゃんにバレたら、きっとまた怒られてしまうだろう。


「俺たちは、鈴の味方だからな?」


悩んでいると、聡樹がそう言ってあたしの頭に手を置いた。


優しい温もりを感じる。


駿の家の近くまで行ったってなにかが変わるとは思えない。


なにもわからないまま帰ってくることになるかもしれない。


だけど、このままグズグズとなにもせずに時間ばかりが過ぎていくよりも、何か行動を起こしていたい。


「わかった。行ってみよう。でも、先におにぎりを食べてからね」


あたしがそう言うと、2人が笑ってくれたのだった。
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