雪の降る日に、願いを消して
☆☆☆

駿の家は丘のふもとにある。


大通りから少し入った場所で、沢山の住宅が並んでいる。


歩きながら家々を確認してみても、どこも空家にはなっていないようだ。


可憐さんはアパートかマンションに暮らしていたのかもしれない。


だとすると、今はもう他の入居者がいて可憐さんに関することは一切なくなっているかもしれなかった。


「あの先が駿の家だね」


スマホで表示させた地図を確認していた紗英がそう言ったので、あたしの心臓はドクンッと大きく跳ねてしまった。


紗英が指さしている前方へと視線を向けると、茶色い二階建ての屋根の家が見える。


白い壁に、広い庭。


立派な家だ。


感心していると、駿の家と向かい合う形で建っている家が目に入った。


綺麗な住宅街に似つかわしくなく、庭は草が生い茂っている。


その家が見えた瞬間、あたしの足は止まってしまっていた。


心臓がさっきよりもうるさく跳ねているのがわかる。


家の塀も黒く汚れていて、所々にこけが生えている。


管理する人もいないのか、完全な空家になっているように見えた。


「あの家か……」


聡樹が呟くように言った。


きっと、そうなのだろう。


あの家が可憐さんが暮らしていた家。
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