雪の降る日に、願いを消して
無理矢理足を踏み出して家に近づいていく。


近づけば近づくほど、荒れ果てた庭が見えてくる。


腰くらいまでの草が茂っていて、その中に投げ込まれたゴミが散乱している。


異臭が鼻孔を刺激したところで、あたしは立ち止まった。


表札に名前は出ていない。


管理者のいない空家を、ゴミ捨て場のように扱っている人間がいるのだ。


それを間近で見た瞬間、嫌悪間が湧き上がった。


どうしてこんな事をするのだろう。


かつては人が生活をしていた家なのに、どうしてこんなことができるんだろう。


心のない人たちの行動を想像してしまい、すぐに脳内からかき消した。


可憐さんの家がこんなに荒れ果ててしまっているのを見て、萌ちゃんは何を感じたのだろう。


子供の頃の約束なんて忘れてしまう。


そう思っていたけれど、この現状を見ると約束を忘れられない理由もわかる気がしてくる。


こんな状態では時間が止まってしまっても仕方がない。


あたしはその場に立ち尽くし、荒れた家を見上げた。


二階建ての立派な家だ。


可憐さんが暮らしていた当時は庭の手入れもちゃんとされて、綺麗な家だったはずだ。


「ひどいな」


聡樹がそう言って顔をしかめた。


紗英が聡樹の隣で家の様子を見て頷く。
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