雪の降る日に、願いを消して
自分たちで片づけてあげる。


ふとそんな案が過ったけれど、この土地になんの関係もないあたしたちがいきなり掃除を始めるワケにはいかない。


なにか理由を見つけて、ちゃんと誰かに許可を取って掃除を始めるのだ。


でも、理由って?


考えてみたけれど、関係のないあたしたちが持っている理由なんてどれもこじつけに過ぎなかった。


これでは正当な理由にはならない。


それなら大人に相談をして、行政に頼んでもらうというのはどうだろう?


朽ちた空家が倒壊してしまうということも、できれば避けたい。


そこまで考えた時だった。


突然その空家から悲鳴のような声が聞こえて来たのだ。


悲鳴と言って大きな声ではない。


風でかき消されてしまうような、消えてしまいそうな声だ。


「え……?」


声が聞こえた時、あたしは空家の玄関を見つめた。


中に誰かがいるのだろうか?


もし鍵が開けられた状態で、誰でも入る事ができるようになっているなら、その可能性は高い。


あたしも子供の頃空家に勝手に上り込んでかくれんぼをしたことがある。
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