雪の降る日に、願いを消して
かくれんぼくらいならまだいいが、いまの悲鳴は……。


足が、自然と前に出ていた。


「え? ちょっと、鈴?」


悲鳴が聞こえていなかったのだろうか、紗英の驚いた声が後方から聞こえて来た。


「今、この家の中から悲鳴が聞こえて来た」


あたしは振り向いてそう言った。


誰かがいる。


助けを呼んでいる。


「危ないだろ」


聡樹が怒ったようにそう言って、あたしの腕を掴んで引き止めた。


だけど確かに聞こえた。


あたしにも耳には聞こえて来たんだ。


ただの空耳だったのかもしれない。


だったら玄関まで行って鍵がかかっているかどうかの確認だけして、戻ってくればいい。


そう思った。


が……「もうやめてくれ!!!!」そんな悲痛な叫び声が後方から聞こえてきて、あたしと聡樹は振り返った。


そこに立っていたのは駿だった。


駿はボロボロと大粒の涙を流し、空家の塀に体を持たれかけるようにして立っている。


駿の声はあたしに向けられていると思った。


が、違った。


駿はあたしたちのことが見えていない。


駿の目はあたしたちを通り越して家を見つめているのがわかった。
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