雪の降る日に、願いを消して
こんなに怒っているショウを見たのは初めてだ。


「そんなに怒るなよ。それに、お前は俺との約束を破って桜子と付き合い始めたんだってな」


ショウがジッと駿を見てそう言った。


駿はハッとしたようにショウを見る。


「怪我を見せてみろって」


ショウにそう言われて、駿は大人しくその場に立ち上がり、上着を脱いだ。


その瞬間、腕に広がっている青アザが目に飛び込んできた。


紗英が「ひっ」と小さく悲鳴を上げる。


あたしは唖然としてその青アザを見つめる。


つい最近できたそうなアザもあれば、昔にできたのであろう、黒ずんだアザもある。


それだけじゃない。


駿の体の隠れた場所には切り傷や火傷の痕などが無数にあるのだ。


あたしは声も出せずにその体を見つめる。


「これは駿の傷じゃないから、安心して」


ショウが手当てをしながらそんな事を言う。


駿の傷じゃない?


現に駿の体につている傷なのに、なにを言っているのか全く意味がわからなかった。


「なぁ駿。こいつらには本当の事を話してもいいと思うんだ」


新しい傷を消毒して包帯を巻いた後、ショウがそう言ったのだった。


「はぁ? なに言ってんだよ」


駿はドスンッとソファに腰を下ろしてしかめっ面をした。
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