雪の降る日に、願いを消して
☆☆☆

「入学式の日に遅刻してきた俺にあからさまに怪訝そうな顔をしていたのは鈴だったんだ」


そう言われて、あたしは咄嗟に「ご、ごめん」と、謝っていた。


だけどショウは気分を悪くしたようではなく、懐かしそうにほほ笑んだ。


「あぁ、俺は会話もした事がない子に嫌われたんだなって思った。でもさ、俺が猫を助けて病院へ連れて行っていたって説明をすると、鈴は目を輝かせてたんだ。『すごいね』とか『猫は無事なの?』とか、誰よりも心配して声をかけてくれた」


確かにそうだった。


思い出して懐かしさに頬が緩んでしまう。


「それで、猫が退院して飼い主を捜していた時に真っ先に手をあげてくれたのも鈴だったんだ。その頃から俺、鈴の事をずっと見てた。鈴が飼う事になったトラを言い訳にして何度も話かけて、必死で距離を縮めようとしたんだ」


ショウはそう言い、照れたように頬を赤くした。


「だけど、俺と駿には彼女を作らないという約束があった。それだけじゃない。俺たちが交互に学校へ来ている事をバレてはいけないから、特定の仲間は作らないようにしていたんだ」


ショウに言われて、あたしは2人の学校生活での態度を思い出していた。


駿はいつも自分の机に座っていて、桜子と会話をしている。


ショウはクラスメートたちに囲まれている。


一見真逆なのだけれど、特定の仲間を作らないという点では同じだったのだ。


だけど駿は恋人を作らないという約束を破ってしまったのだ。


そこから、ボロが出始めてしまった。
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