雪の降る日に、願いを消して
だけど、俺は桜子の気持ちに答える事はできなかった。


この頃、その気持ちはより一層に強くなっていた。


なぜなら兄のショウが可憐への気持ちを口にし始めていたからだった。


ショウは外ではそんな素振りは見せなかったものの、家の中では『可憐が好きだ』という言葉をよく口にしていた。


あの頃はまだまだ子供だったから、恥ずかしいという感情はなかったんだろう。


兄の気持ちを知った俺は正直焦っていた。


顔も背丈も、性格もよく似ている双子の俺たち。


可憐がどちらを選ぶかなんてわからなかった。


このままじゃ兄に可憐を持って行かれてしまう。


そう思った事をよく覚えて来た。


俺は可憐に対してもっとちゃんとアプローチしていかないとダメだ。


桜子を相手にしている暇なんてない。


そのまま3年生になった時、なんの前触れもなく可憐が学校を休みがちになったのだ。


学校で何かあったのだろうかと心配したが、休んでいる可憐の家には毎日のようにクラスメートたちがお見舞いに来ていた。
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