雪の降る日に、願いを消して
☆☆☆

学校から出ると人ごみはまばらになりはじめ、校門を抜けるとあたしは完全に1人なった。


見知らぬ生徒たちが楽しげな会話をしながら、あたしの隣を通り越していく。


あたしは歩調を緩めてゆっくりと歩き出した。


駿と桜子と笑い声を思い出す。


2人が悪いわけじゃないし、憎いわけでもない。


それなのに吊り上がった眉はなかなか元には戻ってくれない。


あんなに楽しそうに笑い合えるのに、どうして付き合わないんだろう。


いっそ2人が付き合い始めてくれた方があたしにとっては楽なのに。


そんな気持ちがふつふつとわきあがって来る。


自分が告白できない理由が2人にあるとでも言うように、怒りはとめどなくあふれだす。


分かっている。


あたしは自分の勇気がないことを2人のせいにしているだけなんだ。


自分勝手で我儘な自分に眉が下がった。


ため息を吐き出し、学校の近くにある公園を通り過ぎようとしたとき……「鈴」聞きなれた声に呼び止められて、あたしは足を止めた。
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