雪の降る日に、願いを消して
イジメにあっているような様子はない。


だけど、可憐の両親はお見舞いに来てくれたクラスメートたちを家に上げる事はしなかった。


病気がうつってはダメだからという理由で、その日出た宿題だけを受け取っていた。


時々登校できる時があっても、可憐はふさぎがちだった。


『大丈夫か?』とか『風邪、よくなったか?』と聞けばとても小さな声で『大丈夫だよ』と、返事をする。


だけどその顔からは笑顔が消え、小さな体は脂肪が落ちて更に小さくなってしまったように見えた。


3年生が終る頃には可憐の姿を近所で見かける事はほとんどなくなっていた。


地域の行事にも参加しなくなり、誕生日会も、夏祭りも、可憐の姿はなかった。


俺は何度も可憐の家に足を運んだけれど、その度に可憐の両親に門前払いを受けるだけだった。


どうして?


なんで?


そう思いながらも月日は過ぎていき、俺たちはついに6年生になっていた。


もうすぐ小学校を卒業してしまう。


最後に可憐に会ったのはいつだっけ?


思い出そうとしても思い出せず、記憶の中の可憐は小さなままだった。


俺とショウと桜子の3人だけがどんどん成長して、可憐だけが子供のまま。


そんな感覚だった。


いつしか俺は可憐の家のチャイムを鳴らす事をやめていた。


時々可憐の家の前で立ちどまり、小さくため息を吐き出す程度だった。


可憐に会いたいという気持ちはまだ持っていたけれど、会わせてもらえないことはもう十分に理解していた。


子供ながらに、想いを伝えることもなく失恋してしまったような気分を味わっていた。
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