雪の降る日に、願いを消して
そして小学校生活最後の1学期が終る頃、俺は可憐が引っ越したと聞いたのだ。


それは夕食時で、不意に両親から聞かされたことだった。


『可憐ちゃんはずっと体が弱くて学校を休んでいたでしょう? だから、ここよりももっと環境が良いところに行くんだって』


母親が俺たち兄弟に優しく説明してくれる。


だけど俺は納得なんてできなかった。


なにかがあればすぐに俺に話を聞かせにやってきていた可憐が、俺に内緒で引っ越しなんてするはずがない。


そんな気持ちがあったんだ。


俺は母親から話を聞くと同時に立ち上がって玄関へと走っていた。


可憐が引っ越すなんて、そんな事は絶対にあり得ない。


だって俺はまだ自分の気持ちを伝えてもいないんだから。


こんな中途半端な状態で、どっかに行ってしまうなんて卑怯だと思った。


『駿、どこに行くの!?』


後方で母親の声が聞こえて来ても無視して、俺は玄関を出た。
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