雪の降る日に、願いを消して
☆☆☆

石段を登りきると、大きく開けた境内がある。


山に囲まれている境内はとても涼しくて風もよく通る。


俺たちよりも先客がいたようで、子供の笑い声がきこえてきた。


境内の裏手には更に上へと上がって行く階段があり、その奥にはもう1つの神社がある。


そこで遊んでいるらしくて子供たちの姿は見えなかった。


『お祭り楽しみだね』


桜子が言う。


『だよな。俺フランクフルト食べるんだ』


『駿はいつも食べ物の事ばっかりだよね? 花火だって楽しみなのに』


『そうだけど、花火の前に食べなきゃダメだろ』


そんな話をしながら賽銭箱に小銭を投げ入れた。


『そんな事よりさ、ちゃんとお願いしよぜ』


そう言ったのはショウだった。


ショウの顔を見るとすごく真剣な表情をしている。


『お願いって?』


桜子が聞く。


『可憐のことに決まってるだろ』


ショウの言葉に心臓が大きく跳ねた。


『可憐の、なにをお願いするの?』
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