雪の降る日に、願いを消して
振り返ると聡樹が立っていた。


聡樹は右の脇にサッカーボールを抱えて、左手で鞄を持っている。


その姿にあたしは一瞬目を見開いた。


「聡樹……部活は?」


「今日は休みなんだ」


「休みでも、聡樹は毎日練習してたよね?」


「あぁ。だから今日は一旦帰って、地元チームで練習する」


そういう事かと納得するあたし。


聡樹は部活以外でも地元のサッカーチームに所属しているのだ。


学校でもサッカー。


家でもサッカー。


本当にサッカー漬けの毎日を送っている。


「鈴は今日は1人なのか?」


聡樹があたしの隣に立って歩き始めた。


「うん、紗英は今日用事があるからって先に帰っちゃった」


「そっか。お前さぁ……」


「なに?」


聡樹の顔を見上げてみるけれど、その顔はオレンジ色の夕日に照らされてしっかりと確認することができなかった。


「前から思ってたけど、すっげぇ不器用だよな」


突然言われた言葉にあたしは目を見開き、そして聡樹を睨んだ。


「なにそれ。あたしはお裁縫とかちゃんとできるよ?」


「そうじゃなくてさ、人間関係とかさ」


「人間関係?」


そう聞き返して、ハッとした。


聡樹は駿と桜子の事を言っているのかもしれないと、気が付いたからだ。
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