雪の降る日に、願いを消して
俺はそう言いながらゆっくりと女の子に近づいた。


『なに言ってるの、可憐なワケないじゃん』


桜子が俺を止めようとして手を握った。


俺はそれを振り払い、泣いている彼女に近づいていく。


近づくにつれて夏の薄い服の中から骨ばった肩が浮いているのがわかった。


足も手も、随分と細い。


体もとても小さくて、小学校4年生くらいにしか見えない。


『可憐』


俺は彼女の前に立ってそう呼んだ。


彼女はビクンッと大きく体を震わせて、そしてゆっくりと顔を上げた。


痩せこけて頬骨が浮いている。


目はうつろで真っ赤に充血している。


何日もお風呂に入っていないのか、近くにいるだけで匂いがした。


それでも、それは可憐だったんだ。


間違いなく、俺の初恋の相手だったんだ。


『な……んで……?』
< 272 / 312 >

この作品をシェア

pagetop