雪の降る日に、願いを消して
俺は夕飯の途中で外へ出て可憐の家を見たことを思い出していた。


その時、可憐は家の中にいたんだ。


そう思うと全身に鳥肌が立った。


可憐の体につけられた無数に傷痕。


真っ暗な家の中。


それらがどす黒い線で繋がって行くのがわかる。


『お父さんと2きりなの?』


桜子が聞く。


俺は今すぐ耳を塞いでしまいたい衝動にかられていた。


だけどそれもできなかった。


逃げちゃいけない。


好きな人が今どんな生活をしているのか、ちゃんと知らなければなにも解決はしない。


『そうだよ』


可憐の言葉が耳をつんざく。


嘘だろ。


冗談だろ。


父親と一緒なら、どうして可憐は学校に来ないんだよ。


どうしてこんなに骨が浮いた体をしてるんだよ。


そんなの、小学校6年生の俺でも理解できた。
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