雪の降る日に、願いを消して
可憐の敵が父親だからだ。


あの家で暮らすしかないのに、その家には敵がいる。


だから可憐は何もできずにこうしてボロボロになって神社に身を隠しているのだ。


『今、お父さんは仕事?』


桜子が聞くと、可憐が頷いた。


それを確認した桜子は俺とショウと交互に見る。


『警察へ行こう』


桜子の目は本気だった。


あぁ。


それがいい。


こんな状態でほっとけるわけがない。


可憐はこのままではきっと殺されてしまうだろう。


俺とショウは同時に頷いた。


『やめて!』


そう叫んだのは可憐だった。


可憐は小さな体をガタガタと震わせて青ざめている。


『なんで? だって、可憐は――』


『あたしの身内はお父さんしかいないんだから!』


震えながら可憐は叫んだ。


ボロボロと大粒の涙を流し、俺たちを睨み付けている。


身内と言っても、可憐にこんなひどい事をしている人間だ。


それなのに可憐は自分の父親を庇おうとしている。


俺はその気持ちが理解できなかった。
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