雪の降る日に、願いを消して
「好きな相手に告白もできずにさぁ」


「うるさいな」


あたしは聡樹からそっぽを向いた。


聡樹にそんな話題をふられるとは思っていなかったあたしの心臓は、うるさいくらいにドキドキしている。


「桜子のことも、相手を傷つけたくないとか思ってんだろ?」


図星を付かれてあたしは聡樹を見る。


聡樹は『やっぱりな』という表情を浮かべていて、それが見下されているように感じられた。


あたしは返事をせずに聡樹を追い越した。


文句を言われるなら別に日にしてほしい。


そう思って歩調を早める。


「ちょっと、待てよ」


腕を掴まれて、あたしは振り返る。


聡樹は真剣な表情であたしを見ている。


同じ制服を着た生徒たちが次々と通り過ぎていき、不意に人気がなくなった。


帰宅ラッシュの第一波が終ったのだ。


あたしは聡樹を見る。


聡樹もあたしを見ている。
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