雪の降る日に、願いを消して
すべてを聞き終えた時、あたしは自分が泣いている事に気が付いた。


「神様は駿の願いを聞き入れたんだ」


ショウがそう言い、駿の体へ視線を向けた。


駿の体には相変わらず無数の傷が残っている。


「これは駿の傷じゃない。可憐の傷なんだ」


それはとても信じがたい事だった。


だけど、きっと嘘ではないんだろう。


あの荒れ果てた家からきこえてきた悲鳴。


あれは可憐さんのものだったんだ。


駿があのタイミングで家から出てきて、辛そうに塀に寄り掛かっていた事も納得できた。


「あの神社での出来事があってから、俺は駿を助ける事決めたんだ。駿は約束のせいでまともな体ではなくなってしまった。学校へ通う事も一苦労だ。だから、俺が代理で登校しているんだ」


ショウがそう言い、ほほ笑んだ。


ただ体が弱いだけなら、ショウが自分の人生を犠牲にする理由がわからなかった。


だけど、今ならよくわかる。


駿は可憐さんと痛みを分かち合っているのだ。


そんな駿を応援したいと思うのは当然のことだった。


特に双子のショウからすれば、その気持ちは大きかったに違いない。


「警察には言わないのか?」


聡樹が静かな声でそう言った。


ショウと駿は一瞬目を見合わせて、そして切なそうな表情を浮かべる。
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