雪の降る日に、願いを消して
☆☆☆

あたしが本当の愛を持っているのかどうか、自分ではよくわからなかった。


だけど家族を愛し、そしてショウを愛しているという自信はあった。


この程度の愛じゃダメなのかもしれない。


もっと深い、駿と可憐さんのような愛が必要なのかもしれない。


それでも、やってみないと始まらない。


翌日は雪が降る予定だった。


家の中にいてもその冷たい空気が肌で感じられる。


コートを羽織って外へ出ると、肌を刺すような寒さが体を覆い尽くした。


少し触れるだけでパリンッと音を立てて割れてしまいそうな世界が広がっている。


あたしの胸の中にある緊張感も手伝って、外の世界に一歩足を踏み出すのにも抵抗があった。


午前3時の世界は真っ暗で、すべての生き物が寝静まっていた。


そんな中、あたしの家に向かって歩いてくる足音が聞えて来た。


その小さな足音に途端に申し訳ない気分になった。


こんな時間に家に来るように言われて、素直に来てしまう彼女は、きっと誰よりも兄弟の事が好きなのだろう。


「寒い」


あたしの前に現れた彼女は仏頂面でそう言った。
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