雪の降る日に、願いを消して
『死ぬ』という言葉を発する時、萌ちゃんはチラリとあたしを見た。


気にしてくれているみたいだ。


「わかってるよ。だけど助けたいって思ったんだもん。仕方ないじゃん」


そう言って肩をすくめて見せた。


みんなに言えばきっと止められてしまう。


だからあたしは萌ちゃんだけに連絡を取り、夜中に家を抜け出したんだ。


「怖くないの?」


「怖いけど……でも、あたしが死んだ後に2人が幸せになってたらって考えると、怖くなくなるよ」


「へぇ……」


可憐さんには申し訳ないけれど、可憐さんが助かるかどうかよりも、あの双子が幸せであるかどうかの方が、あたしにとっては重要なことだった。


あたしが願いを消した後、可憐さんも助け出されればそれが一番いいと思う。


だけど、これだけはどうなるかわからないし。


「あんたなら、どうにかしてくれるかもね」


萌ちゃんがそう呟いたけれど、あたしの耳には届かなかったのだった。
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