雪の降る日に、願いを消して
☆☆☆

その場に立ち尽くしていても、何も起こる気配はなかった。


周囲は来た時よりも明るくなりはじめて、空は今まで見えなかった灰色の雲を照らし出していた。


何時間この場にいて、何時間願っただろうか。


階段の上り下りを繰り返し、何度も何度も膝をついてお願いをした。


お百度参りというのをテレビで見たことがあったからだ。


ズボンのひざ部分はすり減って穴が空き、汗で前髪がぺったりと張り付いている。


それでも何も起こらない。


神様は出て来ない。


やっぱりあたしじゃダメだったんだろうか。


あたしの持っている愛を差し出すくらいじゃ、神様は願いを聞き入れてはくれないのか。


そもそも、神様なんて本当にいるんだろうか?


駿たちの話を聞いたから信じ切ってしまったけれど、本来は信じていなかった。


あの体の理由はもっと別のところにあるんじゃないの?


そんな気持ちになってくる。


境内で立ち尽くしていると、どんどん汗がひいていくのがわかる。


朝の寒さは厳しくてあたしはまた歩き出した。


あたしが今できることは、これだけなんだ。
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