雪の降る日に、願いを消して
だから、やらなきゃいけない。


バカだなって思われても仕方がない。


あたしだって、今の自分を客観的に見れば大笑いすると思う。


それでもやめるわけにはいかなかった。


一度石段を最後まで下りて、鳥居の前で向きを変えて一例する。


この参拝方法が正しいのかどうかさえ、あたしにはわからない。


だけどやるんだ。


神様があたしの前に出てきてくれて、駿を助けてくれるまで。


あたしは石段を一歩一歩上って行く。


もう体力は限界が近かった。


百回なんてとうに過ぎている。


それでもなにも起こらないのだから、続けるしかない。


足元はふらついて今にも転げ落ちてしまいそうだ。


ぐっと踏ん張って自分の体を前へ前へと進めていく。


その間にもあたしは神様に願っていた。


お願いします。


駿の願いを消してください。


あたしの愛も体も差し出します。


駿を助けてください。
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