雪の降る日に、願いを消して
人一人分くらい上にいる自分の体。


暖かさからあたしはコートを脱いだ。


するとそのコートも同じように空中へ浮かんでいる。


みんなの顔を見る。


みんな、なにも言わなかった。


ただ呆然と立ち尽くしてあたしを見ている。


「大丈夫だよ、みんな」


そう言う自分の声がとても響いて聞こえて来た。


ああぁ、この光の中は現実とは違うんだ。


直感的そう思った。


だけど恐怖心はなかった。


これで駿とショウは救われるんだ。


そう思うと胸の奥がとても暖かくなっていく。


ふと空を見上げると、小さな雪が降って来た。


チラチラと舞う雪は躍るようにあたしたちに降り注ぐ。


光の外はとても寒そうに見えて、少しだけ心配になった。


「ここにいたら風邪をひくよ? あたしの事は心配しないで、早く帰って」


そう言ったつもりだった。


だけど声にはなっていなかったようで、ただ口をパクパクを動かしているあたしを呆然と見つめている。


あれ?


どうして声が出ないんだろう?
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