雪の降る日に、願いを消して
☆☆☆

目が覚めると心が随分とスッキリしている事に気が付いた。


泣く事ですべてをリセットしたような感じがする。


鏡の前で自分の姿をチェックして、「よし」と、小さく口に出す。


奇跡的に目は腫れていないし、笑顔も作れている。


あたしは手早く着替えをして鞄を持ってリビングへ向かう。


「おはよう」


いつも通り挨拶をして、テーブルについた。


「おはよう鈴」


「おはよう」


両親とも変わらない様子でそう返事をしてくれる。


だけどあたしにはわかっていた。


2人が大きな心であたしを見てくれている事を。


あたしが何か話してくれないかと、待っている事を。


あたしは食事をすませて脱衣所へ向かった。


このまま学校へ行って授業を受ける。


いつも通りの日。


「鈴、ちょっといい?」


寝癖を直していたところ脱衣所がノックされてお母さんが入って来た。


「昨日ご飯を食べなかったけれど、体調でも悪いの?」


体調のせいではないと昨日から気が付いているのに、お母さんは何も知らないふりをしてくれている。


あたしはドライヤーを止めてお母さんを見た。
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