雪の降る日に、願いを消して
「それにしても、今日の桜子ってなんだか熱烈すぎない?」


コソッとそう言われた言葉に、あたしは小さく頷いた。


紗英から見ても桜子の変化には気が付いたみたいだ。


とうことは、クラスメートの大半が桜子の変化には気が付いているだろう。


それでも桜子は周囲の事なんて気にせずに楽しげな声で駿と会話を続けている。


全身から駿が好きだ!


という言葉を発している感じで、見ている方が恥ずかしくなってくる。


だけど……うらやましいな。


素直にそう思っていた。


2人は付き合っていない。


それでもああやって好きの気持ちをぶつけ合う事ができて、それを拒否されることはないのだ。


それはきっと幸せな事なんだろう。


そう思うと不意に昨日の帰りを思い出した。


聡樹の気持ちに答える事ができなかったあたし。


「鈴、どうかしたの?」


ぼーっとしているあたしを心配して紗英がそう聞いて来たので、あたしは慌てて頭の中の聡樹をかき消した。


「なんでもない」


左右に首をふり、そう言ったのだった。
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