雪の降る日に、願いを消して
「別に、なにもないよ」


「鈴が言いたくないならそれでいいけど」


紗英はそう言い、おにぎりを手で掴んで食べた。


風がふくと少し寒い。


これからどんどん気温は下がって行って、もうベランダに出てお弁当を食べる事はできなくなるんだろう。


それを寂しいとは思わなかったけれど、こうして紗英と2人だけの空間がなくなってしまうのかと思うと、ちょっとだけ寂しく感じられた。


「今日のあたし、変?」


「変だって言ってるじゃん。ついでに言うと、聡樹も変」


突然出てきた聡樹の名前にあたしはご飯を喉に詰まらせてむせこんだ。


ペットボトルのお茶をグイッと飲んで、喉のつまりを流し込んだ。


「そっか、聡樹となんかあったんだ?」


あたしの反応は誰からみてもとてもわかりやすいものだったようで、紗英はそう言った。


あたしは渋々頷いた。


親友である紗英には隠し事なんてできないみたいだ。


あたしは昨日の出来事を紗英に説明して聞かせた。


「そっか。とりあえずはおめでとう」


紗英はそう言い、あたしのお弁当箱に卵焼きを1つ分けて入れてくれた。
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