雪の降る日に、願いを消して
紗英が頬をふくらましつつ、「だからさ、この前配信された動画が面白くってね」と、さっきも言っていたであろう、言葉を繰り返していく。


その時だった。


「駿!?」


桜子のそんな声が聞こえてきて教室中が静かになった。


みんなの視線が2人へ向いている。


ここからじゃ駿の背中しか見えないけれど、桜子の慌てた様子で何かが起こったのだとわかった。


「なに? どうしたの?」


そう聞きながら立ち上がったその時だった。


駿の体がぐらりとゆれて、椅子を倒しながら床に倒れたのだ。


一瞬なにが起こっているのか理解できなかった。


人が倒れる瞬間を見たのは産れて初めてのことだった。


それも、相手は駿だ。


大好きな駿が横倒しになるのを、スローモーションのように見ていた。


「駿!!」


桜子の叫び声でようやく体が動いた。


「駿、大丈夫!?」


そう言いながら駿に駆け寄る。


手を伸ばして駿の体に触れる直前、あたしと駿の間に桜子が割って入っていた。
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