雪の降る日に、願いを消して
家に戻ると愛猫のトラが喉を鳴らして足元にすり寄って来る。


名前の通り茶色いトラ柄のこの猫は、駿が助けた猫だった。


動物病院に連れて行ったものの駿の母親は動物アレルギーを持っていたようで、家では飼えないという話を聞き、すぐに手を上げたのだ。


あたしの家はアレルギーの人はいないし、一軒家で大家さんに怒られることもない。


共働きだから昼間トラは寂しい思いをしているかもしれないが、それ以外には何も問題はなかった。


「トラ、今日もいい子にしてた?」


そう聞きながら片手でトラを抱き上げ、リビングへと向かう。


リビングのドアを開けた瞬間、あたしは「あ!」と、声を上げた。


リビングのテーブルの上にティッシュがまき散らされているのだ。


「トラ、またやったね?」


手の中のトラにそう聞くと、トラはそっぽを向いている。


自分が悪い事をしたという自覚があるから、あたしと目を合わせる事ができないのだ。


「全くもう、片づけも大変なんだからね」


ブツブツと文句を言いながらトラを床におろし、部屋の暖房を入れてからティッシュの残骸を片付け始める。


あたしが片づけをしている間、トラは足元をウロウロと歩き回っている。


主人のいない家の中で好き勝手し放題なトラだけど、このトラの存在こそがあたしと駿を繋ぐ大きな役目となっていた。
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