雪の降る日に、願いを消して
「駿の事、心配だね」


「……うん」


青白い駿の顔を思い出す。


本当に具合が悪そうだった。


「ねぇ鈴、あたし思ったんだけど」


「なに?」


「聡樹と……一応付き合て見たらどうかな?」


その言葉にあたしは目を見開いて紗英を見た。


紗英は申し訳なさそうな表情を浮かべているが、冗談で言っているのではなさそうだ。


「な……んで……?」


「だって……。そっちの方が鈴はきっと幸せになれるんじゃないかな……」


紗英の声はとても小さかった。


言っていいのかどうかひどくためらっている。


だけど、紗英の言いたいことは理解できた。


さっきの桜子の様子を見ても、あたしに入る余地はないのだとわかる。


だからこそ、紗英は聡樹と付き合ってみる事を進めてきているのだ。


聡樹ならきっとあたしの事を大切にしてくれるだろう。


今までだって、そうだったように。
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