雪の降る日に、願いを消して
だけど……あたしは今のまま聡樹と付き合う事なんてできない。


駿への気持ちを持ったまま他の人と付き合えるほど、あたしは器用ではない。


その時だった、教室の前のドアが開いて駿が入って来た。


「おい駿、大丈夫かよ!?」


「急に倒れるとか、お前どうなってんだよ」


クラスメートたちがワッと駿に駆け寄って行き、あっという間にその姿は見えなくなってしまう。


だけど一瞬見えたその顔はとても調子がよさそうに見えた。


「ちょっと貧血だったんだ」


という駿の声が聞こえてきて、あたしはホッと息を吐き出した。


「よかった、大したことなかったんだね」


紗英も安心したようにそう言った。


「本当だね」


駿のずっと後から桜子が教室に入って来るのが見えた。


クラスメートに囲まれている駿の横を通り過ぎて、自分の席に座る。
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