雪の降る日に、願いを消して
☆☆☆

教室を出るとすぐに駿の姿を見つけた。


駿は1人で歩いている。


時々他のクラスメートたちに声をかけられながらも、立ち止まる素振りはなかった。


その後ろ姿を見ていると、途端に胸の奥が熱くなっていくのを感じる。


好きだ。


そんな気持ちが湧き上がってくるのを感じる。


もっと近づきたい、一緒にいたい、この気持ちを伝えたい。


いろんな感情が好きという2文字に変換されてあたしの足を突き動かす。


「駿!」


すぐ後ろまで来て声をかけると、駿は驚いたように振り向いた。


「鈴、どうした?」


小首を傾げてそう聞いてくる駿。


その、なんでもないような仕草や声色の1つ1つにあたしの心は引き寄せられていくのだ。


「一緒に……帰らない?」


さっきクラスメートたちが断られている姿を見ているあたしは、声を絞り出すようにしてそう聞いた。


そして、グッと拳を握りしめる。


手には汗をかいていて、しっとりとしているのが自分でもわかった。
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