雪の降る日に、願いを消して
「あー……今日は1人で帰ろうかと思って」


駿は困ったように頭をかきながらそう言った。


そうだよね。


クラスメートの誘いを断って置いて、あたしの誘いを受け入れる事なんて、きっとない。


あたしは小さく笑った。


「トラを、見に来ない?」


そう言うと、駿の表情が変わった。


困り顔が一瞬にしてほほ笑みに変わった。


「トラ、元気か?」


「うん。すごく元気。だけど最近家に誰もいない時にとくイタズラをしてるの」


「イタズラ? どんな?」


「リビングに置いてあるティッシュを全部引っ張り出しちゃうんだよ」


そう言うと、駿は声を上げて笑った。


会話をしながら足は自然と生徒玄関へと向かう。


このまま自然な感じて並んで帰れたらいいな。


そう思い、あたしはトラの話題を振り続ける。


「トラの画像もあるよ、見る?」


「見る見る!」


「これ。昨日撮ったばかりのトラ」


そう言いながら下駄箱で靴を履きかえて、2人で並んで外へ出る。


それはあたしがずっと憧れていたことだった。


駿と一緒に登下校すること。
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