雪の降る日に、願いを消して
駿は週に一度くらいはかならずトラの様子をあたしに訊ねて来る。


だからあたしは毎週トラの写真を新しく撮り、それを駿に見せてあげるのだ。


寝ているトラを見れば「気持ちよさそうな顔してるな。鈴と一緒にいると安心するんだろうな」と、笑ってくれる。


ご飯を食べているトラを見れば「食べさせ過ぎるなよ? どんどん太ってデブ猫になっても知らないぞ」と、注意してくれる。


話題の中心がトラであっても、あたしにとっては駿との大切な時間だった。


あたしは駿の言葉に素直に笑い、素直に頷く。


それだけで心の中が暖かくなる。


「ほらトラ、ご飯の時間だよ」


片づけを終えてそう言うと、トラは興奮したように部屋の中を走り回りはじめた。


なによりもご飯の時間が大好きなのだ。


トラは食欲も旺盛で、猫の缶詰1つでは満足できず、その後にオヤツのおねだりをするようになっていた。


このままじゃ駿が言っていた通り、いつかはデブ猫になってしまうかもしれない。


そう思いながらもおねだりをされたらどうしても強く断る事ができずにいた。


缶詰を銀色の猫のお皿にうつすと、飛ぶようにしてトラがやって来た。


お皿に顔をうずめて必死になって食べている。


その様子を見ているとあたしもだんだんお腹が減ってきてしまった。
< 6 / 312 >

この作品をシェア

pagetop