雪の降る日に、願いを消して
気が付けば手を伸ばしていた。


「駿!!」


そう言って声を上げる。


駿が立ち止まり、また驚いたような表情であたしを見た。


「どうした?」


首をかしげ、そう聞いてくる。


あたしの心臓はドクドクと大きく跳ねていた。


楽しい時間をありがとうとか。


もっと話がしたいとか。


言いたいことは沢山あった。


だけど、あたしが今言わなきゃいけない言葉は、そんなものじゃなかった。


「あたし、駿が好き!」


自動車が走り、一瞬声がかき消される。


もう1度言おうか?


そう考えたけれど駿が目を丸くしてあたしを見ているのがわかり、あたしは何も言わなかった。


ちゃんと聞こえたみたいだ。


駿は驚いた表情からすぐに穏やかな表情へと戻り、そしてあたしを包み込むようにほほ笑んだ。
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