雪の降る日に、願いを消して
「それって……?」


紗英が声のトーンを落とし、笑顔を消してそう聞いて来た。


「わからない」


あたしは左右に首を振ってそう答える。


「『ありがとう』って、一見OKって意味にも聞こえるけど、なにがどう『ありがとう』なんだろうね?」


紗英がそう聞いてくるので、あたしは思わず笑ってしまった。


昨日のあたしも全く同じ事を考えていた。


告白後の『ありがとう』ほど都合のいいセリフはないんじゃないかと思ってしまう。


「保留にされたか、断られたってことだと思う」


あたしがそう言うと、紗英はしかめっ面を浮かべた。


駿の返事に不満があるようだけれど、なにも言わなかったのだった。
< 69 / 312 >

この作品をシェア

pagetop