雪の降る日に、願いを消して
あたしはこの場から逃げてしまいたい衝動に駆られながら、萌ちゃんを見つめた。


「お兄ちゃんに告白しましたよね?」


そう聞かれた瞬間、あたしは頭の中が真っ白になった。


手に持ったポーチを危うく落としてしまいそうになる。


なんでそれを知っているの?


「な……んで……?」


しっかりと質問をしたいのに、声が喉に張り付いてしまって出て来ない。


あたしの方が年上なのに情けない。


そう思い、下唇を噛んだ。


「お兄ちゃんに教えてもらったからです」


萌ちゃんが当たり前な返事をする。


妹の萌ちゃんが告白した事を知っていると言う事は、話をしたのは駿自身に決まっている。


そんなのわかっていた。


だけど、理由は全くわからなかった。


自分の妹に告白された事を伝えるなんて。


OKして付き合い始めたのならまだ理解できるけれど、駿は答えを濁したのだ。


それなのに、わざわざ伝えるなんて。


嫌な感情が胸の奥を埋めつくす。


黒く重たいスライムみたいな感情が口から飛び出してしまいそうだ。


「お兄ちゃんの言は諦めた方がいいですよ?」
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