雪の降る日に、願いを消して
『ほんとだよ』


そう言いながら、告白してしまった事が恥ずかしくなって紗英から視線をそらせた。


その反応を見た紗英は少しの沈黙の後『あたしは、鈴のことも桜子の事も友達だと思ってる』そう言ったのだ。


桜子が駿へ切なげな表情を向けている事を、紗英も気が付いていたのだ。


無言で駿の後ろ姿を見つめている桜子はとても儚げで、今にも消えてしまいそうな透明感があった。


『……桜子って、やっぱり駿のことがすきなのかな?』


自分でそう聞いておいて、胸の奥がチクリと痛むのを感じた。


今まで心の中で桜子の気持ちを気のせいだと思い続けていたけれど、こうして質問することで気のせいでは済まなくなってしまう気がした。


『たぶんね。桜子はわかりやすいから、クラスのみんなが気が付いてると思うよ』


『……そっか』


あたしは小さな声でそう言って、俯いた。


クラスのみんなが桜子の気持ちに気が付いている。


それならやっぱり、桜子は駿の事が好きで間違いないだろう。


あたしの気持ちに気が付いているクラスメートがいないとすれば、みんなからすればあたしが悪者になるのかな。
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