雪の降る日に、願いを消して
☆☆☆

あたしにとって桜子は一番のライバルだった。


駿が好き。


その気持ちで負けたとは思っていない。


だけどあたしの気持ちは伝わることがなかった。


それなら、今度は桜子の番だ。


桜子ならきっと、駿に受け入れてもらうことができる。


ライバルを応援することになるなんて、思ってもいなかった。


だけど、2人が付き合う事になれば、あたしの胸の重みも晴れるかもしれないと感じていた。


「桜子、ちょっといいかな?」


昼休憩。


お弁当を食べ終えた桜子にあたしはそう声をかけた。


駿があたしに視線を向ける。


その目を直視することができなくて、あたしは駿を見てみないフリをした。


「え、なに?」


桜子は片時も駿から離れたくないのか、少し嫌そうな顔をあたしへ向けて来た。


それでも、話をするなら今しかない。


桜子は今日も駿と一緒に帰るのだろうから、少しだけその時間を分けてもらわないと困る。


「ここじゃ話せないから」


そう言うと、桜子は渋々立ち上がった。


「駿、すぐ戻るから待っててね」


まるで自分の子供にでも言い聞かせるように、そう言う桜子。


その様子に少しだけ苛立ちを覚えたが、2人にしかわからないこともありそうだ。


あたしはそう考え、桜子を連れて教室を出たのだった。
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