雪の降る日に、願いを消して
できない
あたしは桜子を屋上へと連れてきていた。


肌に冷たい風があたる。


誰でも出入りできるようになっている屋上は高い塀が作られていて、景色を見るための窓は開閉できないものになっていた。


塀の上部は手前に反るような形になっていて、登れないようになっている。


それでも頭上に見える空はとても綺麗で、毎日沢山の生徒がここに来ていた。


「話ってなに?」


そう言う桜子を木製のベンチに座らせて、あたしは隣に座った。


「少し寒い?」


「ううん、大丈夫」


質問に質問で返したあたしに、桜子は普通に返事をしてくれた。


「話ってなに?」


桜子は同じ質問を繰り返した。


「……あたしは桜子の事を見て来たから、桜子が駿の事を特別な目で見てることは知ってるよ」


あたしがそう言うと、桜子はゆっくりと顔をめずらせてあたしを見た。


その表情は穏やかだ。


「桜子も、あたしが駿を見ている事に気が付いているよね?」


「……うん」


桜子が頷く。


驚いている様子はない。
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