雪の降る日に、願いを消して
「あたしと駿は……そんな簡単な関係じゃないから」


桜子が泣き声でそう言った。


「それってどういう意味?」


聞きながら少しずつ怒りを感じ始めていた。


桜子と駿の間にしかわからないことは、きっとあると思う。


それなら、それをあたしに教えてくれてもいいじゃないか。


桜子が駿に告白できない理由なんて、あたしには理解できない。


あたしが桜子なら、とっくの前に駿と付き合ってライバルみたいな邪魔な存在だって寄せ付けないだろう。


「言えない」


桜子はそう言って、俯いてしまった。


なに、それ。


あたしは両手の拳を握りしめた。


「桜子に告白する勇気がないだけなんじゃないの?」


「そんなんじゃない」


「駿は桜子のことがきっと好きなのに、振られるのが怖いからって逃げないでよ」


「そんなんじゃないってば!!」


桜子が勢いにまかせて立ち上がり、あたしを睨みつけて来た。


あたしも負けじと睨み返す。
< 86 / 312 >

この作品をシェア

pagetop